« 桑の実 | トップページ | わが家の雑煮 »

食卓の時間

大掃除をしていたら、義父の13回忌に編んだ冊子が出てきた。
自分の文章を読みながらなつかしさがこみ上げた。
流れるように過ぎた歳月と、食卓に刻まれた時間と・・
長い間ブログを閉じていたが、また日々の思いを綴ってゆこうと思う。

食卓の時間」

午前5時。階下に下りると義母は七輪で炭をおこしていた。
「あれえ。珍しいねえ。どうしたの?」
「うん。なんとなく寝そびれちゃって・・」
ぱちぱちと炭の爆ぜる音が、朝の空気を震わせている。
やかんのお湯が勢いよく湧くと、義母は慣れた手つきで
コーヒーを落とし真っ白なカップに注いだ。
そして小さなトレイにカップをのせて仏壇に運び、
しばらくの間、手を合わせていた。
「毎朝、おじいちゃんにコーヒーを淹れてるの?」
「そう。あの人、近所の喫茶店にマイカップをおくくらい
コーヒーが好きだったじゃない。だから。」
いつも元気いっぱいで働き者の義母の、聖なる時間を見たような気がした。

我家の食卓は、義父が製図をして職人さんに作らせた自慢の品だ。
8人は座れる大きさなので、料理の下ごしらえをするのにも便利で、
新年会や人寄せの時にも活躍してきた。食事の支度をしていると、
三人の子供達が「お手伝い、お手伝い」と言いながら駆け寄ってきた姿を
なつかしく思い出す。
今朝のみそ汁は、じゃがいも、茄子、いんげん、かぼちゃ、茗荷と具沢山だ。
一口すすると、野菜の甘味と味噌のふくよかな香りが胸のあたりまで降りてきて、
しみじみとした気持ちになる。
「これはおばあちゃんに教わった味なのよ。本当においしいよねえ。」
進学を機に長女は東京で、長男は長岡で暮らすようになった。
義父の生まれ変わりのように誕生した次男も高校生となり部活に追われている。
家族全員で食卓を囲む時間も少なくなってしまった。
しかし、義母は毎日精力的に料理に向かっている。
カレー、花豆、山菜おこわ、・・手作りのお惣菜を食卓いっぱいに広げ、
こまめにパックしては遠方の親戚や友人に送る。それが生きがいなのだ。
義父がこの状況を想像したか否かは定かでないが、
「しょうがねえな」と笑いながら見ているに違いない。

食卓に刻まれた時間は、これからも家族をひとつにつないでくれだろう。


|

« 桑の実 | トップページ | わが家の雑煮 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事